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横領とは
テレビでニュースを見ていると、横領で逮捕みたいな話をがよく出てきますよね。
説明するまでもありませんが、会社のお金や物品を着服してしまうことです。
テレビやドラマの中の話で、まさか自分の会社では起こらないだろうと思っている方がほとんどではないでしょうか。
しかしながら、外部から会社経営に関わらせて頂く中で、度々発生していて、決して対岸の火事家事ではなく、いつ自分の会社で起きてもおかしくない事案であることを念頭に置いてもらえればと思います。
代表的な手口
手口は色々ありますが、比較的以下のような方法が多いです。
・架空や不当に高い発注を出しキックバックを貰う。
・帳簿を改ざんし差額を着服する。
会社が受ける被害とペナルティ
会社としては着服された現金は当然損失になりますが、それ以外にも多くの損失を受けます。
税務リスク
会社は毎年決算を行い国に収支の申告を行なっています。
売上を計上しない形での横領があった場合、税務署から見れば所得を隠したのと同じ状態になります。申告漏れに対する延滞税や重加算税のほか、脱税に問われる可能性というリスクがかかります。
従業員が勝手にやったことで会社も被害者ではありますが、それで済ませてもらえる訳ではないので注意が必要です。
人的損害
横領が発覚した場合、当然当該社員を今まで通り勤務をさせるのは難しいです。会社の恥に当たる事案なので、代わりの人材の確保、他の社員への影響、退職に伴う引継ぎの問題など影響を受けます。
調査にかかるコスト
本人も正確な犯行日時を覚えていないケースや、わかりやすい証拠は残さないことが多く、
被害額の把握や証拠、書類の収集など多くの手間と時間がかかります。
専門家費用
ある程度の金額になると弁護士さんを筆頭に、専門家に依頼をすることになります。
報酬のほかに、公正証書の費用、税務の修正申告を行う場合は申告費用等も必要になってきます。
本人の責任
業務上横領については、刑法で厳し罰則が規定されています。
刑法以外にも大きな責任を負うことになります。
会社に対しての責任
懲戒解雇を最大の処分として、金額や経緯、反省の度合いにより、減給、降格など会社からの処分を受けることとなります。
被害金額の程度や本人の反省などを総合的に考慮して決定されることが多いです。
民事的な責任
会社に対する損害賠償責任を負うことになります。横領したお金そのものはもちろんですが、税務署への修正申告で延滞金が発生した場合は延滞金相当額、弁護士や税理士への報酬、対処にかかった経費などの賠償責任が発生します。
原則として、横領事件がなければ会社が負担しなくて済んだ費用等は請求できると思われます。
しかしながら、会社側の管理責任も問われることが多く、争った場合、損害全てを認められないことが多いようです。
刑事的な責任
業務上横領は刑法253条に定められており、罰金刑の規定なく、有罪になれば10年以下の懲役が科せられます。
意外と身近に起こること
普通に生活をしていれば、横領があったなんて話はあまり聞かないと思います。
横領は会社に恥とも言える事案であり、積極的に公表する話ではない点、刑事事件にして刑務所に入るより、転職して返済に充ててもらう方が会社側も返済される可能性が高まる点から、特に表に出ることなく示談にするケースも多くあります。
外から会社の支援をする立場で仕事をしていますが、横領は決して珍しい話ではありません。
起こってしまった時の対処
発覚した時の初動対応
横領事件では初動対応が重要になります。疑わしき事例が発生した場合は、本人に聞き取りをする前に可能な限り証拠になるものを集めてください。証拠なしに本人をに話をすると、多くの場合話をこじらせてしまいます。
証拠を集めた上で本人に話をします。
その際に音声を録音したり認めた場合は事実を書面に残し、事実を認めた場合はサインを取るようにしてください。
本人が認めたと言う事実を残すことで、相性を求めるときにスムーズになります。
横領の事実を認めた場合は、そのまま自宅謹慎等にします。職場に入ることで証拠の隠滅をされたり、他の従業員と口裏合わせをやりにくくします。
長く勤めている社員であったり、事業の拡大に貢献した社員である場合が多いですが、恩情かけるかどうかは事実関係を明確にしてから検討するようにしてください。
曖昧さを起こしたり、中途半端に対応すると証拠を隠滅されたり、事実を認めなかったりトラブルが大きくなることが多いです。
温情をかけるにしても、全貌の把握と証拠の確保を行ったうえで慎重に対応してください。
本人が認めなかったり、明確な証拠が得られない場合は、非常に難航しますのでスピーディかつ慎重に進める必要があります。
対応に正解はありません。証拠保全や初動を誤るとトラブルが大きくなることが考えられます。早急に弁護士への相談を行うことが必要です。
弁護士へ相談をする
多くの経営者にとって、横領事件を予測していた例は少なく根耳に水だったそうです。
初めてのことに戸惑ってしまい中途半端に本人と話すことで話がこじれてしまうケースが多いようです。
被害金額が大きくなることが予測される時は、すぐ弁護士に相談をしてください。
話し合いで和解できたとしても、金額が大きい場合は1回で返すことは難しく、何年もかけて分割して返済をしてもらうことが多くあります。
証拠を押さえる、適切に解決をする、和解で決まったことを履行してもらう。
解決までに長い期間を要することが多いです。
弁護士さんに相談しておくことで、約束通りに返済されなかったりするリスクにも対処できます。
内部統制と予防
色々と書きましたが、ひとたび起こると金銭的な被害以外に、社会的な信用や対処にかかる手間や費用など、大きなダメージを受けます。
横領を行った本人が1番悪いのかもしれませんが、横領を防ぐ対策を怠った会社側も一定の責任を問われるのは事実です。
極端な話ですが、1億円の現金受け取り業務であれば必ず2人体制で行う会社が、100万円なら1人でやらせる。なんてことは普通にありますよね。
十分な対応が取れたにもかかわらず、効率化の観点でリスクを選んだということでしょうか。
起こさないことを最優先に、予防に努め、早期に発見できる体制を作ることが1番の対処になります。
売上や現金、帳簿の取り扱いを1人で行わせない、チェック項目を設けて横領が起こりにくい仕組みを作ることが大切です。
まとめ
横領は会社としても恥にあたる事案であり、刑事事件にして実刑となり刑務所に服役することとなれば横領されたお金が戻ってくる確率も下がることから、和解で解決するケースが多くみられ積極的に外部に公表することもあまりしません。
こういった理由から身近で耳にすることは少ないかもしれませんが、実際に多く発生しています。
開業時から会社を大きくするのに貢献してくれた社員だったり、経理を一人に任せてしまっていたり、仕事上経営者から非常に信頼されている状況で起きています。
信頼はしても任せっきりにしないこと。
チェックの仕組みを作ることで、無用なトラブルや労力を出さない。そして従業員を守ることにも繋がります。
横領はニュースやドラマの中の遠い話ではなく、割と身近な犯罪です。
まさか自分の会社ではなく、未然に防ぐ対策をしてください。